「教科書は、知識の宝庫」
私が高校生の時、大学に進学した先輩から聞いた言葉です。
私は英語が嫌いで定期テストは赤点ギリギリ、模擬試験では偏差値40台で、大学進学を諦めようとしていました。
そのとき先輩に勧められたのは、理解しなくて構わない、何も考えなくていいから、毎日学校の教科書を何度も書き写すこと。また、ひたすらその書いた文章を声に出して読むことでした。
英語の教科書を毎日書き写すことで、理解は出来なくとも、英語の決まりや文法を自然に覚えていきました。また、耳で覚えていたのか、声に出して読むことで自分の英作文の間違いに気付くことが何度かありました。これは、理解したというよりは、英語はこういうものだ!と納得したというのが私の実感でした。
今になって考えると、学校の教科書には基本的な文法や構文が必ず載っていますから、それを毎日書き続けることにより必要なものが自然と身についたのだと思います。
半年ぐらいたった頃から私の英語の成績は急激に伸びてきました。もともと単純な人間なので、成績があがると英語が嫌いだったことすら忘れ、毎日の勉強時間のほとんどを英語に費やすようになっていきました。そして、英語は私の武器となりました。
理解しなくても構わないからということが私の英語への苦手意識を少し軽くしてくれていたのだと思います。大学に進学した私は、自分自身が変わることができたこの経験を他の人にも味わってもらいたいと、家庭教師になりたいと思うようになりました。
初めて受け持ったのが英語の苦手な翔子ちゃんという高校生でした。
翔子ちゃんは中学から英語が嫌いで、定期テストでは平均点どころか20点あることのほうが珍しいというぐらい、英語ができませんでした。
問題を解いてもらっても、単語。文法は全く覚えていないし、説明してもよくわかっていない様子で、正直どうやって指導していいのかわからなくなってしましました。ただ、私も英語が嫌いだったので翔子ちゃんの気持ちはよくわかります。
やってもわからないから、やる気が起きない。だから・・・そのまま放っておく。
その間も授業は進み、どんどんついていけなくなる。
そしてさらにやる気がなくなる。
高校のときの私も、このままではいけないと思いながらもどうしていいのかわからず、無駄な時間ばかりが過ぎていきました。しかし、私は先輩のアドバイスをもらったことで、状況が一変しました。
そこで、翔子ちゃんに、とにかくだまされたと思って私の試した方法でやってみないかと提案してみました。 しかし、なかなか聞き入れてくれません。中学の内容すらわからないのに、高校の教科書を写したってわかるようになるとは思えないというのが、翔子ちゃんの意見でした。また、毎日しないといけないことに抵抗があるようでした。
そこで、中学の教科書を1日1ページならどうかというと、それなら量も少ないからやってもいいよ、と渋々ですが承知してくれました。
それから、半年間毎日、英語の書き写しを翔子ちゃんは続けてくれました。最初は、1ページがやっとだったようでしが、だんだん慣れてきたのか何ページか進めているときもあり、半年間で中学の内容は一通り終了しました。また学校での定期テストの結果にはまだ効果が表れていませんでしたが、授業の内容が以前に比べると分からないことが減ってきたようでした。
それからまた半年、指導に行くと翔子ちゃんが見せてくれたものは、平均点以上の英語のテストでした。
その後必ず平均点以上はキープ出来るようになっているので、前より英語好きになったんじゃない?と質問してみると、好きな訳ではないと返ってきました。
相変わらず英語を勉強することは嫌いなんだそうです。ただ、書き写すのは、勉強というよりも、練習だからそこまで嫌いではないそうです。
書くだけでいいなら、最後まで頑張れるよ。と、高校3年になった翔子ちゃんは、今でも毎日、英語の書き写しを続けてくれています。
小さな努力を積み重ねる大切さ。
やれば、できると実感すること。
生徒と向き合い、最適な勉強方法を探す、それが一番大切だということ。